「初心忘るべからず」の初心の意味 (朝礼ネタ274)

当流に、万能一徳の一句あり。初心、忘るべからず。
この句、三個条の口伝あり。
是非の初心、忘るべからず。
時々(じじ)の初心、忘るべからず。
老後の初心、忘るべからず。

この文は、今の「能」に当たる猿楽を確立した世阿弥が芸の奥義について書き残した
秘伝書「花鏡(かきょう)」の「奥段(おくのだん)」に記されています.
お分かりの通り、かの有名な言葉はここから出たものです。

これについて研究された偉い先生方によると、この「初心」の本来の意味は、
抱負、意気込み、情熱など物事を始めた頃に抱いていた前向きの気持ちのことではないようです。

「是非の初心」とは若い時の未熟な芸のことです。
若い頃は芸の上達も早いので、つい自分が上手になったと勘違いしてしまいます。
「是非」とは今の自分の芸を批判的に見るという意味で、いくら上達してもそれはまだまだ未熟な芸だと知りなさいという教えです。

「時々の初心」とは壮年時代の最盛期の芸のことです。
芸の頂点にある時期で名人などと称されてその気になりがちですが、人の身体や精神や考え方は歳と共に変化するものなので、
その時々に応じた芸を常に追求すべきと言っています。芸は停滞してはならないのです。

最後の「老後の初心」は、体力朽ち果てて息が上がり、目も見えず声も枯れてしまった老齢期でも、
そんな老人にしかできない芸がまだある筈だと叱咤するのです。

こう読み解いていくと、初心とは、今の自分の芸がまだ最低の位置にあると知ることだと私には思えます。
芸に終わりはないのです。

芸を技術技能と置き換えれば、技能工にとってはとても大切な言葉なのではないでしょうか。

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